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わたし達が付き合うことになってから、早二週間が過ぎ、季節も例年より遅めの梅雨に突入していた。
相変わらず登校の時には駅で小林先輩に待ち伏せされ、周りから注目を集める日々。恐れていた、小林聡悟ファンからのお呼びだしや早く別れやがれアピールもなく、極々平和な毎日を送っていた。
「あ……」
体育の授業と片付けを終えて、茜とおしゃべりをしながら体育館と校舎を繋ぐ渡り廊下を歩いていると、前方から見知った金髪の彼が友達に囲まれてやってきた。
「ミィ」
わたしと目が合った途端、ちょいちょいと手招きされて、茜に了承を取ってから駆け寄った。
あまり見ることのない小林先輩の学校指定のジャージ姿は何だか新鮮だ。
「何ですか?」
「あげる」
反射的に差し出した手に転がったのは、小指の先くらいの大きさの黒猫が付いたストラップ。
「じゃあね」
「あ、はい」
ただそれだけ。大した会話をすることなく、小林先輩は友達と話ながら体育館へと入っていった。
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