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「……っ」
何か言おうとする小林先輩は上手く言葉が見つからないのか、ぱくぱくと金魚のように動かしているだけで、意味を持つ声は発せられない。
真っ赤になって言葉に詰まる小林先輩。
彼のそんな姿がツボにハマってまうしまったらしい背後の梶谷先生と佐渡先輩は、ついに大きな笑い声をあげた。
「あははは! 可愛いなぁ、聡悟」
「何ヵ月か前まで奈落の底におるような顔しとったクセに……あー、あかん。腹痛い」
好き放題に言われているけれど、確かに赤い顔で動揺する小林先輩は梶谷先生の言う通りなんだか可愛らしい。
黙っていれば穏やかで大人っぽさすらあるのに、口を開くとちょっぴり子供みたいな部分を覗かせる。
そんな部分にわたしはいつもきゅんとさせられるのだ。
「もうお前らうるさいっ。嫉妬して悪いかよ!? 彼女なんだからいいだろ! つーか、写真撮るんじゃねぇのかよ!? さっさと済ませるぞ!」
容赦なくわたしの胸きゅんポイントをつつきまくる先輩は、開き直ったと言わんばかりに未だ笑いの治まらないふたりに言い放つ。
先輩達の晴れの日だというのにいつも通りすぎるくらいにいつも通りなやりとりに、しんみりしてしまいそうだと構えていたものが急激に緩んだ。
そして、それにつられて表情までも緩んでしまったらしく。
「こら。何、美季まで笑ってんだよ。もとはと言えば、美季のせいなのに」
……怒られてしまいました。
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