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美季が俺の隣からいなくなるなんて、考えたくもない。
ただでさえ、これから心配ごとが増えるというのに、だ。
ふと、花を贈ってくれた彼女の笑顔が思い浮かぶ。
こちらまで綻んでしまうような美季の笑顔。
以前は少女らしいそれであった表情も、いつからかあどけなさだけではなくなったことに彼女は気付いているのだろうか。
幼さの中に垣間見える、未来の美季の顔。
その顔は、俺の心臓を鷲掴みにするものでもあると同時に、余計な虫がついてしまうんじゃないかと悩みごとの種でもあったりする。
「はぁぁ……マジでヘタレだわ」
美季と離れて耐えられないのは、俺の方かもしれないなんて。
余裕の欠片すらない自分のヘタレ加減に落ち込みたくなってしまう。
「何やねん。辛気臭い溜め息吐くな。お前がヘタレなんて、河瀬さんも重々承知しとるやろ。その上で付き合うとるんやし、今さら気にすることでもないんとちゃうんか」
……篤史くん。
それはフォローなのかな?
全然、いいこと言われてる気がしねぇ。
「だいたい昔からお前の視野は狭すぎんねん。猪突猛進やのうて、しっかり周りを見渡してみい。せっかく新しい環境に出るんやから、いい機会や思うて自分を見直してみいや。身内しか入れへん殻に閉じ籠ったままやと、お前は雛のまま、河瀬さんが先に大人になってまうぞ」
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