親切なキミ

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校舎外れのこの場所で、待ってろ、と言われてポツンと立っているのだけれど、本当にバカ正直に待っていていいものだろうか。 あの掃除の人以外、誰も通らないここは、校舎から聞こえてくる生徒の笑い声や楽しそうに話している声が、余計に寂しさと虚しさを感じさせるんだけど。 「本当にここ、どこよ……」 そろそろお腹も限界を迎えそうだ。今にもお腹が鳴りそうなのに、午後の授業なんか乗りきれそうにない。 このまま、授業中にお腹を鳴らすという恥をかくハメになるのだろうか……。 「お待たせ。ほら、行こう」 再び途方に暮れかけると、またまた背後から声がかけられた。 その声は掃除の人のもので、ちゃんと戻って来てくれたんだと安堵して振り返った。 「……」 「何? 迷子なんでしょ? その様子だと弁当食べてないんじゃないの?」 そうだけど。 いや、それ以前に。 「どちら様ですか?」 「……はい? 大丈夫? ついさっきまで話してたよね?」
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