親切なキミ

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そ、と一言だけ呟くと、金髪の人は歩き出す。そして、ついてこい、と言うように後ろ手に手招きされた。 しかしながら足の長さが原因なのか、金髪の人は意外にも歩くのが速くて、わたしは小走りにならなければ置いていかれそうな勢いだった。 そういえば掃除中で忙しいって言っていたし、早く戻りたいのかもしれない。 そんな時にわざわざ連れていってくれるなんて、何だか申し訳ないな。口で説明してくれても良かったのに。……辿り着ける自信はないけれど。 金髪の人の後ろを歩いていると、ざわめきがどんどん近付いてきて、何となく知ってる辺りまで戻れたんだと安心した。 「何組?」 相変わらずポケットに両手を入れたままの金髪の人は、わたしを見ると小首を傾げる。 それがちょっとかわいく見えてしまった。 「あ、三組です」 「梶谷(かじたに)先生のクラス?」 不意に立ち止まった金髪の人。 「え? あ、はい。担任ですけど……」 彼の言う通り、梶谷先生はわたしのクラスの担任だ。 穏やかな性格と愛想のいい笑顔が三十代には見えないくらいかわいらしい、と女子生徒には大人気で、しょっちゅう女の子に囲まれているような先生。
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