親切なキミ

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「そっか」 金髪の人は自分から聞いたクセにそれだけ言うと、再び歩き出した。 本当に変な人だ。 何を考えているのか、全くわからない。 そういえば、名前も知らないや。学年は……たぶん先輩だよね。学年集会でこんなに派手な頭の人なんて見たことないし。 ……そもそも、校則的にこの色は許されるのだろうか。 「はい。到着」 ガラリという音と共に金髪の人の足が止まり、我に返ればそこはわたしの教室。ご丁寧にドアまで開けてくれたらしいけれど、クラスメート達はド派手ヘアの出現に目を丸くして声を失っていた。 しんと静まり返った空気と視線が痛い。 「じゃあね。迷子ちゃん」 キュッと口角を上げた金髪の人は、元来た廊下を戻っていった。 「迷子ちゃんて……」 そういえばわたしも名乗ってなかった。 しかもお礼言い忘れたし。
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