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「上から…と言うとこのマンションですか?」
「そうだよ。あたしはここの3階に住んでる谷川実です。よろしくね」
「なんだよ…『ココ』って……マンションならマンションだってくらい書いとけよ…」
と、蒼空が簡略すぎる地図を眺めながら愚痴を零す。
「それよりも谷川さんって、女の人だったんですね?」
「よく『ミノル』って間違えられるんだ……ほんとは『ミノリ』なんだよ。それより疲れたでしょ?さ、上がって上がって」
実がそう促し、今降りてきた階段を上ろうとするが
「すみません…ちょっと彼が、お腹空いた空いたウルサいんで、先にコンビニの場所教えてくれませんか?」
と、女の子だからだろうか?七海が誤魔化しながら尋ねる。
「空いてるうえにうるさいの……」
七海が蒼空を睨みつけ、黙らせたところで、実が再び喋りだした
「気にしなくてもあたしは一人暮らしだからね。食べるものくらい出したげるよ。さ、今度こそ上がろっか?」
「ほら!蒼空!!ちゃんと谷川さんに感謝しなさい!!」
「なんだよ…お前が……谷川さん、有り難く頂きます。ありがとうございます」
蒼空が多少ぶっきらぼうで、そして棒読みで礼を述べたのは、七海が再び彼を睨んだからである。
一方の七海は、満面の笑みで瞳を輝かせながら、既に実に着いて行っている。
蒼空は理不尽なものだ、と思いながらも黙って二人の後を追った。
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