62人が本棚に入れています
本棚に追加
どうしたもんかなぁとため息をついて帰路につく俺は、右手に持つ鞄を見た
ガチャガチャと、ぶつかる音がするその鞄は、中に刀が入っているのを認識させて憂鬱になる
(もし刀とかバレたら警察沙汰だ
それに武者修行だって? ゲームやアニメじゃないんだぞ?)
某格ゲーのキャラよろしく、俺より強いやつに会いに行けというのか
「あれ、飛影じゃないですか」
鞄だけ見て悶々としながら歩いていると、声をかけられた
聞き慣れた声だ
「よう、暁…散歩か?」
返事をして、振り向いた形でこちらを見ている友人に追い付き、歩幅を合わせる
「えぇ、まぁ… そういう貴方は…どうしたんですか?」
鞄を見て変な表情をする友人に俺は苦笑いでしか返せない。
(言えるわけがないだろ…)
バレたらどうなるか、わかったもんじゃない
「何、大したことじゃない。何時もの親父のおふざけさ」
あながち間違ってない言い訳をし、友人を無理矢理納得させ、ハハハハと棒読みで笑い曲がり角を進むが…
「うおっ!?」
「飛影ッ!?」
足場が、そこにあるべきコンクリートの地面がなかった
代わりにあったのは目の形をした「落とし穴」だ。
「なんだこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
一緒に落ちた暁が落ちながら離れていく
必死に手を伸ばすが、届かないッ!
やがて暁は見えなくなり、俺は死を覚悟した。
覚悟して頭が冷えたのか、俺は今朝の占いを、暁にも言っていた占いを思い出した。
運がいいけど「落とし穴」に注意…と
(ヤバイ…意識…が…)
空気が薄いのか、意識が消えかける
霞始めた視界に映るのは、不気味に凝視するような無数の「目」だった
「ハッ…後で…SAN値…チェッ…ク…」
俺はとうとう意識を手放し、ただ落ちる事に身を任せた。
最初のコメントを投稿しよう!