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「斗真。モテ期か?」
「いいなぁ~。クッキー…」
礼也はからかい気味に、爽太は切実にクッキーを欲しそうに言った。
「うるせっ…からかうなっつの」
「クッキー…いただきっ!」
爽太がクッキーを取ろうと、素早く手を出した瞬間。
「ぅおぉぉお!!」
「あっ!…そりゃないぜ斗真~…」
「何やってんだ斗真…」
斗真はクッキーを全て口に頬張り、バリバリと音をたてて食べ終えてしまった。
「…ゴクン。うまい!橘さん。クッキーうまかった!」
斗真は立ち上がり、親指を立てて未来に向けて言った。
「うぇっ…!?はい!お粗末様でした…」
斗真はクラス中の注目を集めてしまった。
「日高のやつ大胆だなぁ…」
「ですね~…!」
未来は顔を赤くして俯いている。
「クッキーがぁ…」
「クッキーはもういいだろ…で、斗真。何してんだお前」
「いや…爽太にクッキー食われそうになったから勢いでやった。後悔は…少ししてる…」
斗真は力なくイスに座り直した。
またクラスはいつも通り、昼休み特有の騒がしさを取り戻した。
そして、午後の授業もいつも通り開始され、何事もなく終わる。
ここまでが普段の日常。
そのまま何も起きずに一日が終わるはずだった。
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