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50メートルなんて、10秒もかからないはずなのに、実際に走っている時間の何倍も長く感じた。
「ハァハァ…くそっ!まだかよっ…!」
白銀の狼は、斗真と美斗の何倍もの速さで二人との距離をつめる。
「玄関まであと少し…!」
白銀の狼の威嚇する声が近づく。
「追い付かれる…!?……っ!」
「うわっ…!!」
美斗は斗真の背中に手を当て、思いっきり斗真を突き飛ばし、正面玄関に滑り込ませた。
「アァァアアアアアアッッ!!」
美斗が振り返り、木刀を構え雄叫びをあげると、白銀の狼は警戒して、足を止めた。
「姉ちゃん!何して…」
「斗真。逃げなさい」
「何言って…!」
「お姉ちゃんがこうしてなかったら、あの狼は今立ち止まっていない。きっと二人とも殺されてた。それに、いつ襲ってくるかわからない…だから斗真、逃げて!」
「嫌だ!姉ちゃんも一緒に…!」
「ダメッ!逃げなさい!」
「何でだよ…」
今背を向けたら、白銀の狼が飛びかかってくるのは斗真にもわかっていた。
だが、美斗を、実の姉を見捨てることなんてできなかった。
「姉ちゃん!」
「斗真っ!!」
「…!?」
「お姉ちゃんね。すっごく強いんだぞ!お姉ちゃんにまっかせなさぁい!」
「姉ちゃん…ね゛ぇぢゃん……!いやだよ…」
「大丈夫!すぐ駆け付けるからね。行きなさい。ね?」
美斗は笑顔を輝かせながら斗真に言った。
「ぅうぁぁああああっ!!」
斗真は泣きじゃくりながら、校内へ走った。
あんな怪物に勝てるはずがないとわかりながらも、
大好きな姉を信じて……
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