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廊下をひた走り、階段を駆け下りる。
一階に到達し、冷や汗が染みてくる。
もうすぐ正面玄関。
「姉ちゃん!!」
斗真の声が廊下に響き渡る。
『斗真ぁぁああぁあ!!』
「姉ちゃ…!」
『生きてッ!!』
「は…」
斗真は正面玄関にたどり着いた。
下駄箱を挟んで外側。
白銀の狼が斗真の方へ目を向ける。
左目には折れた木刀が深々と突き刺さっている。
足元には……
美斗が横たわっていた。
「姉ちゃん!!」
美斗の顔に生気はなく、下半身が引きちぎられている。
左腕も肩から下がない。
白銀の狼は血が滴る大きな口をあける。
綺麗に並んだ鋭い牙が光る。
「…!」
斗真は察する。
今、置かれている自分の状況は、考えられる中で最悪の状況下であると。
「やめろォォオオオオオオ!!」
斗真の悲痛な叫び。
そんなもの白銀の狼に届くわけがなく、
白銀の狼の牙が美斗の体に突き刺さる。
途端、美斗の体は宙に浮き、白銀の狼に吸い込まれていった。
斗真は泣き崩れた
決意など何処かに吹っ飛んでいた
絶望が斗真を包み込んでいた
白銀の狼が口の動きを止め、斗真の方へ再び目を向ける
斗真もゆっくりと顔を上げる
斗真の決意に満ちていたはずの目は
殺意に満ち溢れていた
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