氷。

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  目を閉じると思い出すのは、いつも貴方の笑顔でした。 貴方は、私の隣で笑っていました。 私は、貴方よりも笑っていました。 幸せだった事だけを抽出して思い出していく、 そんな都合のいい思い出は、まるで固い氷のようで。 私は、氷が溶けないように心を冷やして、 それを守り続けるのでした。 心の中では分かっています。 幸せではない事が多かったから、この恋は壊れたということを。 もしまた貴方と手を取り合った時、この氷はあっという間に溶けていくことを。 そして、貴方が居なくなった時、また私は氷を作り、溶けないようにしていくことを。 分かっているけれど、願ってしまうのです。 もう一度、貴方に会いたいと。 .
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