第六章 審判の日

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アスターは、シルヴィアの身体をその場に下ろすと、憎悪の瞳で見つめてくるミリに対して、頭を下げた。 「すまなかった」 アービスもモシャスもシルヴィアも頭を下げられているミリでさえも、彼の行動に驚き、目を見開いていた。 「なにを……いまさら」 驚きつつも静かにもらすミリに、顔を上げたアスターが己の真情を吐露する。 「殺すつもりはなかった」 「でも、殺した。私のたった一人の肉親をあなたが奪い去ったのよ!」 ミリの叫びを、黙って聞くアスター。 だが、彼は、強い瞳をたたえ、真実を告げた。 「そうだな。これは言い訳だな。ミラは、自分の信念を貫き、俺を殺そうと襲い掛かってきた。俺は、今まで死のうと思ったことはない。だから、生きるためにミラを殺した。後悔は……無い」 「なんですって! じゃあ、どうして、謝ったりなんかするのよ!」 何かを振り切るかのように、一度瞬きをすると、一気に言い放った。 「お前たち姉妹の一途さにつけこみ、操り、利用した人間が、俺の母親だからだ」 「!」 ミリの顔が強張っていく。 「お前の人生を狂わせた責任は、いつまでも母上との関係を断ち切れず放置し続けてきた俺にある。それに関してはすまないと思っている」 身体がぶるぶると震え、動揺を隠せないでいるミリがアスターに尋ねる。 「オルスティア様をどうするつもり」 その問いにアスターは眉根を寄せ、口を開いた。 「それは……」 そのとき、雲間から降り注いだ月光がアスターの背後で光る凶器を映し出した。
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