第六章 審判の日

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「うわーー!」 「なっなんなんだ! 一体」 シルヴィアの力を目の当たりにした兵士たちは、その未知の力に恐れをなし、剣を放り投げ、逃げ惑う。 そして大混乱の最中、アービスは、呆然とその様を見ている女性に近づき、その手に握られていた短刀をすばやく取り上げた。 「あっ」 青ざめる彼女にゆっくりとアスターが近寄る。 「おまえは、母上の……。ミリとかいったかな」 アスターの腕の中にいるシルヴィアはハッとアスターの顔を見上げる。 「アスター様! あのっ」 焦るシルヴィアをなだめるようにうなずき、ミリに問いかける。 「動機は、あだ討ちか」 ミリが驚いたように、アスターの顔を見る。 「どうして……」 アスターは悲しそうに、でも懐かしそうに言った。 「お前の顔にはあの『ミラ』の面影がある。それにお前の声は、ミラそっくりだ」 それは、アスターに毒を盛り、そして、その手で殺してしまった侍女の名だった。
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