第六章 審判の日

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そして彼の剣はアスターたちを襲うことなく翻り、その刃は、オルスティアの身体を一線したのだった。 「なっ…イオ…ル」 血しぶきをあげ、大地に仰向けに倒れこむオルスティア。 自らの体の異変を理解できず、その血まみれの手をイオルに伸ばす。 「どう…して……」 ごほりと吐血したオルスティアから血とともに流れ出していく命の光を冷めた目で見つめるイオルは、辛苦と悲哀のこもった微笑で、ぽつりと言った。 「私の想いを無視し、私の幸せをいつも奪っていくあなたに、我慢がならないからですよ」 そういうと、イオルは、隠し持っていた笛を鳴らした。 ピーっという音が辺りに響き渡ると、隠れていた兵士たちが一斉に飛び出し、オルスティアに加担した裏切り者たちを捕縛し始めた。 それを見届けると、イオルは振り返り、アスターたちに微笑みかけた。 それはいつものイオルの優しげな表情だった。 「イオル……おまえ」 口を開こうとしたアスターを遮るように、片手を挙げ、首を横に振る。 「いいんだ。これで……」 そういうと、イオルは膝から崩れ落ち、その場に倒れ、意識を失った。 「イオルーー!」 「イオル様!」 「オルスティア様!」 アスターが、シルヴィアが、ミリが、それぞれの大切な者のもとへと駆け寄っていく。 その声を聞きながら、イオルは感じていた。 『やっと……やっと自由になれた……』 だが、その閉じられた瞳からは一滴(ひとしずく)の涙が流れ落ちていた。
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