第一章 鬼神の凱旋 白姫の涙

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皇宮に入った一行は謁見の間へと向かう。 「モシャスさんは?」 そこには、ローザリオンでの一件以来常に傍にいてくれた男の姿が消えていた。 「奴には、別の仕事があるからな」 アスターの言葉にシルヴィアは心細さを感じる。 モシャスの明るさはシルヴィアの緊張をほぐしてくれる。 そして、彼の存在自体がシルヴィアを安心させてくれるのだ。 何かが少しずつ変わっていくのを肌で感じていた。 徐々に謁見の間の扉が見えてくる。 一行は謁見の間にたどり着くと扉の前で立ち止まる。 シルヴィアも同じように立ち止まると、一歩後ろにいたアービスがシルヴィアが被っていたベールを取り去った。 「シルヴィア様。失礼します」 シルヴィアはアービスの方へ振り返る。 その顔は緊張で強張り、元々白い顔がさらに白くなっていた。 アービスの顔を見つめるシルヴィアに、にこやかな微笑みを浮かべ彼はシルヴィアを励ます。 「大丈夫ですよ。我々がついています」 シルヴィアは自分の両隣にいる二人を交互に見る。 左にいるイオルは慈しむように微笑み、右にいるアスターは無表情で前を見ている。 対照的な二人に挟まれ、不安もあるがシルヴィアの心も落ち着いてきた。 一人じゃない。 そう思うだけで勇気が湧いてくる。 扉の両脇にいる門番が扉の取っ手に手をかける。 「第一皇子 アスタリオス・ラ・ジェラルド様。並びに第二皇子 イオルバーン・ド・ジェラルド様のご入場でございます」 扉が開かれる。 シルヴィアはまぶしそうに眼を細めた。 きらびやかな装飾品で飾られた謁見の間は見る者すべてを圧倒させる迫力がある。 真正面に玉座が見える。 そこへ続く道の両脇にはリリィアードの大臣たちや貴族たちがずらりと並び、拍手でシルヴィアたちを迎えた。
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