青紫蘇

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大根菜の味噌汁を作り、昨日の荷物を温めていると、 母がバタバタと帰ってきた。 母の足音は、本当にバタバタ、という感じで、 誰が来たかをすぐにそれが教えてくれる。 「ただいま。おー、良い匂いだこと。」 母にお帰りと言い、今日の献立を言うと、ふぅんと言いながら自分の部屋へと足音を鳴らせた。 母は、私が五歳のときに、夫…つまり、私の父親を亡くしている。 幸い、ばあちゃんや私の兄達がいたから、女手一つ、というわけではなかったが、 それなりの苦労をしながら、私を育て、養ってくれた。 「今日は日曜日だし、特売日だったから、お客さんに引っ張りだこだったわぁ。」 いつの間にかカウンターのそばにある椅子に座っていた母は、 疲れた、という雰囲気をまんべんに出し、右手で左肩を揉んでいた。 これも、いつものことだ。 母は、日曜日でなくても、特売日でなくても、 仕事から帰ってきたら、同じようなことを言い、 同じように肩を揉んでいる。 それは、私が夕飯を作っているときに、ばあちゃんがお風呂をたてる、 と同じように、母の中の儀式なのだろう。 しばらくすると、もうお風呂場の仕事を終えたばあちゃんのもとに、お茶を持ちながら向かっていった。 夕飯ができ上がるまでの嫁姑の団欒。 ほかの家庭がどうだか知らないが、我が家の嫁姑…もとい、私のばあちゃんと母は仲がよい。 ばあちゃんは、母を信頼しているし、母はばあちゃんを慕っている。
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