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――数時間前
―南部国境線砦
小高い丘に造られた砦は堅牢な壁に囲まれ、見るものを威圧する程の殺伐とした雰囲気を漂わせている。
壁の上では二人一組で警戒に当たっているが余り緊張感は感じられなかった。
「あぁ~あ、暇だな相棒」
「全くだ。さっさと交代にならねえもんかねー暇で暇で仕方ね――」
軽口を叩きながら巡回して行く兵士達。しかし、その口は二度と聞く事が出来なくなった。
何故なら……
矢が頭部を貫通したからだ
「――相棒ッ!くそっ、直ぐに司令部に連絡を」
腰のポーチから水晶を取り出し連絡を試みるが何本もの矢が彼の体を貫く。
「ごふっ……!」
吐血をしながらも彼は魔力を流し司令部に連絡をする。
「報…告、エル……フの攻撃…を受けて――」
しかし彼は最後まで報告するまえにエルフでもない第三者により絶命した。
第三者は血が滴り落ちるハルバートを振り払うと、水晶に越しの部下に命令を下す。
「各自砦内を掻き乱してやれ。
それと俺の部隊とエルフ中隊は奇襲を仕掛ける、急げよ」
命令を言い終わった彼は武器を背中に仕舞い、隣に来たエルフを見る。
「これで後戻りは出来ねぇ…覚悟を決めろよエルフ」
「分かっているさ。それよりそちら側は支援を取り付ける事が出来たのか?」
エルフの質問に彼は笑みを浮かべた。
「問題無い。直ぐにあんたに回って来るだろうよ」
「そうか…では、我々フォード共和国と…」
「グラム王国の軍事同盟の締結を此処に承認する」
「では、行こうか…此処から近い主要都市を落とす。
スピード重視で中隊規模で行くぞ」
二人は赤とクリーム色のローブをはためかせ、闇夜に飛び出した。
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