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†
二人が争っている時、グレースは兄と共に数少ない生き残りといた。
人数は五人。皆、所々に傷があるものの命に別状は無い。
「どうする?隊長の加勢に行くか?」
一人の若い青年が皆に聞くが隣にいた青年が叫んだ。
「俺は御免だ!隊長が時間を稼いでる中に逃げよう!
隊長だってそのつもりであの化け物に向かって行ったに違いない!」
「テメェ!隊長を見捨てる気かよ!?」
二人のエルフが言い争う中、グレースは顔を真っ青にしながら兄の治療を続けていた。
「お兄ちゃん…お兄ちゃん…お…兄ちゃん……」
最悪の自体が頭によぎる。その事を考えるだけで目から涙が溢れ出る。
「グレース……」
親友のマニラが心配そうに見てくる。
「おいおい…勝手に殺さないでくれよ…?」
「お兄ちゃん!!」
ゆっくりと起き上がるライルに彼女は驚きながら安堵の息を吐いた。
「朦朧としていたが今の状況は分かってる。
お前達は国境線まで引け、俺は隊長を助けに行く」
彼の言葉にその場にいる全員が反対する。今行けば彼の命は無いからだ。
「ちょっと待って!だったら私が行くわよ、私は皆に比べて怪我が少ないから打ってつけよ!」
マニラはそう自分に結論付け立ち上がり他の者の意見も聞かずに歩き出した。
彼女は後ろを振り返り皆に笑顔を浮かべた。
「直ぐに帰って来るから心配しないで…それにライル?
貴方のお父さんにまだ報告しなくちゃいけない事があるでしょ?」
「マニラ……」
彼女はライルに精一杯の笑顔を送ると今も轟音が轟く地点に歩き出した。
そんな彼女に……
一枚の紙が引っ付いた
「えっ……?」
マニラは声を上げた瞬間。
グレースの目の前が
――真っ赤に染まった
―――
――
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