別れる事になりました

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  「アァァ゛アァア゛アァー!!」 目尻に涙を溜め、怒り狂う姿はさながら鬼に見間違うほどだ。 クロムは刀を前に突き出し牽制する。だが彼女は刀など視界に入っていないのかクロムに猛進する。 刀が彼女の脇腹を切り裂き鮮血が散る。それでも彼女は呻き声すら上げない、クロムは彼女に危機感を覚えた。 彼は突き出した刀を力任せに横に一閃する事で彼女を絶命させる様としたが、不可能な事に気付いた。 彼女が素手で刀を握っていたからだ。手から止まる事なく血が流れるが彼女に大抵の痛みは効果が無いとクロムは確信した。 「マニラの仇ーッ!!」 彼女はクロム目掛けて短剣を振り下ろした。その一撃に迷いは無く純粋な殺意が込められた一撃はクロムの右目に突き刺さった。 「ガア゛ァァ゛アァ゛ァァア゛アァァ゛ーー!!」 右目を抑え後ろに下がるクロムに彼女は雄叫びを上げ追撃する。そんな彼女に残った左目でクロムは睨んだ。 「調子に乗るな!小娘がぁァア!!」 追撃して来た彼女の太股を切り付け、腹に蹴りを叩き込む。 重い蹴りにより空中に浮かび重力に引き付けられ落下する彼女に狙いを定め刀で一閃する。 「グレエェェスーー!!」 しかし兄であるライルが二人の間に入り身を呈して妹を守る。彼の腹に一文字の傷が深く刻まれ、地面に血に染まる。 「あぐぅう゛ぅぅう゛ぅぅーーッ!」 そんな息子達を守る様にアラルがクロムの前に立った。 「頼む!私はどうなっても構わない…だから二人を生かしてくれ!!」 「貴様の口約束を信じろと…? ふざけた事をぬかすな」 夢幻を傷口に貼付けた事で止血するが失明は免れないだろう。今まで幾つもの傷を負った経験がそう告げている。 「エルフは盟約を守る。なんなら血の証明書を書こう…だから二人を見逃してくれ、この通りだ!」 膝を着け額が地面に擦れるほど深くふかく頭を下げた。そんな父親にライルも傷口を抑えながら土下座した。 「俺からもお願いだ。妹だけでも助けてくれ!女のエルフの捕虜がどうなるかアンタなら分かるだろ!お願いだ妹だけでも…!」 「…パパ……お兄ちゃん」 そんな彼等の叫びにクロムはある紙を投げ付けた。 「…休戦協定だ。条件は多額の賠償金、共和国に監視者を派遣。破格の条件だろう?」 「それはつまり…私が休戦を国に提案すれば見逃してくれると?」 「あぁ。正し文字通り死ぬ気でやれよ」
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