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暴風によって空高く打ち上げられたルークはクロムに向かう魔弾を見た。
さっきの魔弾より二回り程でかい。あんな物を喰らえば命は無い。
「兄さん逃げろ!逃げてくれよ!頼む頼むよ!兄ィイーーさぁぁん!!」
彼の切実な叫びにクロムは穏やかな声で言った。
《俺はもう…間に合わない。血を流しすぎたせいか前が…霞むんだ。》
「そんな状態なのにどうして僕なんか助けたんだよ!?」
《言ったはずだお前は変革の――いや、そんなのどうだっていい。お前には…生きて欲しかったんだ》
クロムと魔弾との距離が百を切った。
《いいか…ルーク。生きろ。生きていればなんだって出来る。それと……エレナやレイ、ステラ。あとウルを頼むな》
「止めてよ、お願いだから止めて……」
距離が七十を切る
《そう言えばあの人達に゛お父さん、お母さん゛って一回も言えなかった…良い人達だったな……》
「死なないで下さいよ…っ。兄さんは、僕の憧れなんですから…!」
距離が四十を切る
《ルーク……俺の様になるな…
こんな――ろくでなしに》
距離が十を切った。
もう肉眼では見えない位置にルークは居た。近くに川が流れでいる。あと数秒もすれば着水するだろう。
「兄さん!!兄ぃいさん!兄ぃぃいぃさーーん!!」
ルークは目に涙を溜め、必死に叫んだ。そんな彼の耳にクロムの声が響いた。
《もう充分だ。ありがとう》
その言葉を最後に彼は魔弾に飲み込まれ……
――この世界から旅立った
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