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大気を震わす衝撃と共に波紋状に観客席からのけ反る観衆。
実況席から立ち込める黒煙と炎が、晴天を浸食する。
『キャアァァァアァァっ!!!?』
何処からか女性特有のつんざく悲鳴がした。その声が火薬の導火線の役割を渡す。
老若男女の数千もの観衆が四つしかない出口に殺到する。
大人が床にはいつくばる老人を踏み、母親は子供を掴み人を押し退ける。
死に物狂いで出口に殺到する人間の濁流。
そんな観衆を待ち構えたかの様に出口付近に無数の魔法陣が現れ、陣から豹型の魔物が出現する。
魔物が観衆の一人を噛み殺すと、一層パニックに陥る。
魔物から逃げなくては行けない。しかし、後方から来る観衆に押され、前方の人間達が魔物に突き飛ばされる。
まるで、生贄の様に彼等は魔物に召し上がられる。
それは子供も例外ではない。子供の後方で手を伸ばす母親が見えた。
だが、母親の手が付く前に魔物の牙が子供にたどり着くのが断然速い。
「イャアァァアァァァァぁァアアァあァァ!!!!!」
母親の悲鳴に近い叫びがスタジアムに響いた。
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