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* * *
次に目を覚ました時、クロムは街にいた。十四まで暮らしていた国境に位置するクロム第二の故郷だ。
「……(此処が夢の世界…?)」
もう少しメルヘンチックな予想をしていたクロムは、現実世界と何ら変わりない夢の世界に肩透かしを喰らった気分だ。
空を仰ぐとまだ日は昇り始めて間もない事が解る。
「これって……」
「昔の町並みですよね……」
振り替えると二人が懐かしむ様に街を見ていた。
「昔って、どういう事だ?」
「言葉の通りです」
「例の戦争の性で町並みがかなり変わったのよ。この町並みは、戦争前の状態じゃないかしら」
成る程――クロムはある程度理解すると、此処は紛れも無く夢の世界なのだと認めた。
ルークの夢の世界。戦争前の楽しい世界。クロムが懐かしむ町並みと言う事は、彼がまだこの世界に来て一年以内の状態だ。
――……あの頃は、確かに幸せだったな。
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