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「――行って来なさい。見せてやれ、君がこれまで培ってきた力を――人間の力をね!!」
全ての始まりに終止符を打つ。
大地を蹴り上げ、悪鬼の頭部の上部に跳ぶ。右肘を後ろに引き、拳を一つの岩の様に強く握り締め――撃ち込んだ。
かつてない力の籠められた一撃が悪鬼の身体を貫き、時が止まったかのような数瞬の静寂が訪れた。
『結局ワタシハ何処ニ行ッテモ負ケル運命ノ様ダ……一度ダケデモ良カッタカラ勝チタカッタナ……アァ…本当ニ…クヤシイナ――』
クロムが最後の一撃を浴びた悪鬼が崩れていく。
もう他の頭部は崩れ落ち、唯一動いている頭が一つだけこちらを向き、 何とも形容しがたい瞳を向けていた。
「いいや、そんな事はないさ。君は知らないだろうけど、ある勝負で僕に勝ったんだよ。
悪知恵って言う部門でね」
『クックックッ…ソウカソウカ ワタシ ハ カッタノカ…ソウカ…ソウ…カ……』
悪鬼はその言葉を最後に光と成って消えて行った。
「愚かなだね……僕は君に期待してたんだよ。全く、愚か者だよ……君は」
そんな哀愁が詰まった呟きは、崩壊する世界の彼方に消えて行った。
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