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「‥‥‥‥ブブッ!! イタッ!!」
こらえきれずにトモミが笑い、また指に針を刺したようだ。
「ちょっとトモミ失礼だし!」
「だって、モリゾーって、おじいちゃんだよね?」
「あ‥そうなの‥あの緑の‥」
「ブブブーッ!!!」
笑ったトモミをみて、ノゾミとハルカはちらりとキリの様子を伺った。
すると、キリはほっとしたように笑顔になっていた。
どうやら笑ってよかったらしい。
トモミはひとしきり笑うと目じりの涙を手の甲でぬぐいながら
「モリゾーもいいけどねー、キリちゃんって呼んでいい?」
と、さらりと聞いた。
「うん、モリゾーは男子部員に呼ばれてたんだ。女の子たちからはみんなキリって呼ばれてたから。」
「何か部活やってたの?」
「うん、陸上。」
「え? 運動部だったの?」
ハルカはびっくりして聞くと、キリは今まで見ていたようなくらい印象ではなく、力強い笑顔に変わった。
「ハードルやってて、怪我で入院してて、この間退院したの。」
「あ‥‥‥」
ハルカはそういって言葉をなくした。
でもそれをみてキリはあわてて
「あ、全然気にしないで。リハビリも終わって今は普通に歩けるし。体育の授業くらいなら別に平気だから。」
「そ、そうなんだ‥」
ノゾミもちょっと声をトーンダウンさせてしまったのを見て、キリは言葉をのみこんだ。
話すべきではなかったのだろうか。
でも、それを隠すことをしたくなかった。
話しさえ出来れば‥と、キリもいつも思っていたのに。
「‥‥‥‥」
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