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毎日のように会っていても、静華が友達と遊ぶ日は会えない。
本屋で立ち読みして、以前のような一人の時間を潰す。
コーヒー屋に入ると、偶然、篠原と会った。
「千明ちゃんと待ち合わせ?」
俺は普通に篠原に声をかけていく。
「…そう」
篠原はクールに答えて、買ったコーヒーを手に店内の席に座って、俺は少し考えて、コーヒーを買うと篠原の隣に座った。
「おまえと仲良くしたくはない」
篠原は不機嫌に言ってくれる。
俺はどうやら篠原に嫌われまくっているらしい。
千明ちゃんが俺に気を許しているからなのか、静華が俺の彼女となったからなのかはわからないが…、どっちもかもしれない。
「そう言うなって。俺は篠原と仲良くしたい。で、一つ聞いていいか?」
「静華と千明のこと以外なら」
「おまえとの接点はその女二人だろ。その話題しかないのに。…静華のこと。篠原の気持ちが聞きたい。俺とつきあってるのが気に入らない?」
「…別に。俺は静華の保護者でもなんでもない」
篠原は俺から顔を逸らすかのように、窓の外を見たまま答えてくれる。
殴ったくせにと言ってやりたいところだが、まぁ、認められているから何も言わないんだという解釈にしてやろう。
「だよな。静華も篠原とのつきあいは幻だったって言うくらいだし」
俺は軽く漏らして、手にしたコーヒーに口をつける。
横目で篠原を見ると、篠原は視線を下に落として、どこか俯いていた。
「…おまえに何か言うと静華や千明にすぐに伝わりそうで、何も言いたくない」
「俺、そこまで口軽くないって。信用してくれなくてもいいけど」
「……幻には…されたくない」
篠原は答えた。
そうされる理由がわかってはいるのだろう。
どこか苦い表情を見せて。
「幻にされたくなくても、千明ちゃんを選んだのは、おまえだもんな。俺が大切にするから、もう気にするな」
「…笠井」
「なに?」
「おまえにだけ言ってやる」
「なにを?」
「……静華は俺の初恋で、俺の童貞の相手。…一生、何があっても忘れることはできないと思う」
篠原はそんなふうに俺から目を逸らしたまま口にした。
俺は篠原を見る。
篠原は、らしくないって思うくらいに赤くなって、その顔を自分の手で隠して俯いていた。
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