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クレヤの言葉は、イチと同じ顔をした私でも女に見えると言われたようで、私自身は内心、よかったとも思う。
イチなら怒る。
クレヤと軽く絡んでいると、クレヤに声をかけてきた女の子二人組。
私はクレヤから離れて、遠巻きにそれを見る。
イチは極度の女アレルギーだから、たぶん近寄らない。
言葉もかわさない。
共学、いいなぁと楽しそうな女の子たちの顔を見ると、私は思うけど。
というか、イチは男子校にいけばよかったのに。
自転車通学優先にするから、ここになったんだろう。
楽しそうにしているクレヤたちの中には入れず、私はまた太陽の熱で服を乾かすように寝転ぶ。
セミの声と生徒たちの騒ぎ声。
私の通う高校ではない、そんな空気。
私は目を閉じて、陽射しから顔を遮るように腕を顔にのせる。
そのまま午後の予鈴までと、半分眠っていると、私の腰にふれた手。
私はびくっとして、慌てて起き上がった。
「おまえ、細いな。イチ」
なんて、クレヤが笑いながら、めくれて見えていた私のお腹を隠してくれていたらしい。
「腰というより、くびれたウエストだな。色っぽくて女、悩殺されて逃げてったぞ」
「…色気を振り撒いてるつもりもない」
私はお腹を隠すように腕をあて、クレヤは私の腰にふれてこようとして。
「さわるなっ」
「どれだけ細いのか両手ではかってみようかと」
「はかるなっ」
「男同士なんだから、あんまり嫌がるなよ。逆に恥ずかしくなってくるだろ」
「……じゃあ…、ちょっと…だけ?」
男同士はよくわからない。
そういうものだとされて、従ってみることにした。
「……本気、おまえのケツ掘れるかと思った…」
クレヤは何か顔を赤くして私から顔を逸らす。
イチならたぶん殴り飛ばしてる。
私は…。
クレヤが赤くなったりするから、どきっとして、釣られて赤くなって、何も言えずにクレヤから顔を逸らした。
イチ…だけど。
どこか女と意識されたみたいで恥ずかしい。
そういうの、今までなかったから、余計に。
…ちょっと、うれしかった。
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