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「絶対に嫌だ!」
イチは大きな声で叫ぶように声をあげた。
私はイチに両手を合わせて頼み込んだ姿勢から顔をあげる。
「こんなに頼んでるんだからいいじゃない。ほら、私たち、どっからどう見ても同一人物」
私はにっこり笑って、なおもイチを説得する。
そう。私とイチは双子というやつだ。
目鼻立ちは私が男っぽいのか、イチが女っぽいのか、そのまま鏡を見ているかのように、よく似ている。
ただ、高校に入って、少しばかり私の背は伸び悩み、イチとは2センチくらい身長が違ってきてはいる。
けど、まぁ、そんなものは他人には気がつかれることもないだろう。
「どこがだよっ。おまえは女で、俺は男だっ!」
イチは私を指さして言ってくれる。
そう。そうなのだ。
唯一の違いともいうべき、性別。
そのせいで身長がおいていかれ始めているのも、よぉくわかっている。
私は男に生まれたかった。
どうせなら、本当にイチとまったく見分けがつかないくらいのほうがよかった。
小さい頃は見分けがつかないとよく言われたものだ。
今も私を裸にしない限りは、まだ見分けつかないだろうけど。
だって私、そんなに胸大きくもないし。
下半身ばかりはどうにもならない。
「誰もわからないって。だからお願いっ。イチの学校行ってみたい」
私は再度、イチに頼み込む。
私のしようとしていること。
それはイチのふりをして学校潜入。
やっぱ、別々の高校いったのなら、双子なら一度はやってみたいことじゃない?
「俺のところは普通に共学。ナナが楽しめるものはなんにもないっ」
「じゃ、イチ、楽しめるじゃん。私、女子校だし。女の園に潜入って」
私は男があのカトリック系の女の園の学校に紛れ込むのを想像して、おもしろくて笑えてくる。
「ふざけんなっ。女なんて…っ」
イチはそれを考えたのか、全身に鳥肌をたてて、アレルギー反応を起こす。
情けない男だ。
女が苦手だなんて。
というか、私も女ではあるのだけど?
イチは私にはアレルギー反応を起こさない。
そこは血縁で、しかも同じ顔だからだろう。
口では言うくせに、女とは思われている様子もない。
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