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とにかくダメダメとイチに言われまくって、了承されることは1つもなく。
イチに私のかわりをしろなんて一言も言ってないのに。
私が男のふりをしたいだけなのに。
別に私は欠課がついてもかまわないって思ってるのに。
「嫌なものは嫌だ!ナナ、しつこい」
イチの考えが変わってくれることもなく、私はイチの部屋を追い出されて頬を膨らませて、イチの部屋の扉を蹴る。
ノリが悪すぎる。
イチは本当につまらない男の見本だと思う。
「蹴るなっ!ナナは女だろっ。髪伸ばして少しは女らしくなれっ。この学園の王子気取りがっ。ナナの学校は宝塚かっ」
部屋の中からイチの声が聞こえてくる。
「王子でいいじゃないか。女の子はかわいい。イチの女嫌いがおかしいっ。ゲイにでもなったら?」
私は扉に向かって言って、部屋の中から扉が蹴られたようだ。
大きな音が響いてきた。
「蹴るなっ!扉、壊れるじゃないっ」
「ナナが蹴ったんだろーがっ。おまえはレズにでもなれば?」
そういう趣味が私にないことをわかっていて言いやがる。
女の子はかわいい。
だけど、告白されたって私に同性愛は考えられない。
ねだられれば、キスくらいはしてあげるけど。
そこはただのスキンシップ。
キスするのは嫌じゃない。
私はイチの部屋の扉を蹴り返して、イチもまた扉を蹴って。
扉が壊れるまで蹴りあいになるかと思っていたら、階下からお母さんの大きな声が聞こえてきた。
「一也、七海、静かにしなさいっ!晩ご飯抜きにするわよっ!」
ご立腹のようだ。
ご飯抜きはせつない。
私は扉を蹴ることをやめて、扉に向かって舌を突きだすと自分の部屋へと向かった。
イチの部屋の隣。
小さい頃は同じ部屋だったけど、小学校の中学年くらいに、イチが一人部屋がいいと言い出して、別々の部屋になった。
私はベッドに座って、イチの部屋のほうの壁を見て、諦めきれないイチの学校潜入を思って溜め息をつく。
絶対…楽しそうなのにな。
私、男と絡むの嫌いじゃないし。
小学校も中学校もイチと同じ男友達と遊んでた。
……私が男っぽいのかもしれない。
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