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俺は思いきり安堵の息をついて気が抜けた。
高校の頃は拾われては捨てられるの繰り返しで、自分からいったことはない。
千明ちゃんのこともあって、自分からいってフラれるのは、もう嫌だった。
それでも…他の女を見れないんだから、静華にいっていたとは思う。
静華はマグカップを机の上に置いて、俺に近寄ってきて。
下から俺の顔を覗き込むようにじっと見てくる。
その目に誘われるように背中に軽く手をあてると、静華から俺の唇にキスをくれた。
満たされる心。
うれしくて頬が緩みそう。
「翼くんのこと、もっと知りたい。教えて」
「何が聞きたい?」
「学校でのこととか」
言われて、俺は少し固まった。
そう。俺、もう一つ言っていないことを思い出した。
俺が学校ではお姉キャラやっていて、ゲイと装っていること。
「…医療専門学校で…、学科は医学療法ってやつで…、大学と同じ4年制で…」
俺はそこを避けるように答えてみる。
「学校、男の子ばっかりでもないでしょ?モテるでしょ?」
逃れられそうにない。
というか、隠し事をするのは後ろめたい。
ちゃんとつきあっていきたいと思うから後ろめたく思うのか。
高校の頃のつきあいと比べてみても、千明ちゃんとのことを比べてみても、こんなに後ろめたいと思ったこともない。
「…カマっぽく振る舞っているので」
俺はひかれることを覚悟で言った。
「かま?」
「…オカマ」
「……見えない。やってみて?」
「いや。静華には男として見られたいっ」
ひかれたくないっ。
本当の俺はこっちだからっ。
疑われたくないっ。
「チアキちゃんと話すのはオカマ?」
何か、ハンマーで殴られた気分だ。
泣いていいかな?
いいよな?
「…そう。せめてお姉系と言って」
「見たいなぁ。そんな翼くん」
「いやですっ。それ以上言うと、無理矢理犯すよ?」
俺は静華の体をそこに押し倒していって、その太股を抱えあげながら、足の間に入っていく。
静華は俺の目をまっすぐに見上げてきて。
俺をからかうかのように、笑いながら俺をその腕に抱き寄せた。
千明ちゃんもそうだけど、静華も。
からかってくれる。
そこにハマり中。
小さな芽、一緒に育てよう?
Fin 2012.7.19
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