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助けられて、アピられても、感謝はすれど、受け止められる気がしない。
千明ちゃんが篠原は女性恐怖症だったと言っていたし、篠原も難しいところだったんじゃないだろうか。
俺は飯を静華と食べながら、そんなことを思う。
「ね?どうしてそんなこと聞くの?翼くんは…チアキちゃん以外にアピったことある?」
千明ちゃんの名前を静華が口にすると、相変わらず複雑ではある。
そこは俺が悪いのかもしれない。
篠原を中心に、そのまわりの女が気になったのは俺だから。
気になって…ハマって。
どっちも魅力的。
「ないよ。高校の頃は拾われて捨てられての繰り返しだったし。…静華、かわいいのに、なんで篠原としかつきあってないのかって思っただけ」
「……なんで篠原くんだったんだろうね?あたし、一度は諦めたはずなのに。やっぱり幻だったんだよ、あれは。現実にはとても思えない」
「俺も幻とは言わないでね?俺は確かにここにいて、静華に飯作って食べさせてるんだから」
言われてしまいそうで、すかさず俺は言った。
静華は笑って頷く。
「今度、あたしが作ってもいい?あたしが作ったご飯も翼くんに食べてもらいたい」
かわいい顔して、嫌とは思えない希望を口にしてくれる。
彼女だから嫌じゃないのか。
つきあっていなければ嫌なことなのか。
惚れていなければ嫌なことなのか。
…静華がいて、他の子に同じことを言われれば嫌かもしれない。
「作って。おいしくなくても無理矢理食べる」
「食べられるものは作れるよっ。あ。学校、もう始まるから、学校終わったら翼くんに会いたい。できれば毎日。ダメかな?」
「俺も会いたいから問題ナシ。外寒いし、合鍵渡しておこうか?」
「まだつきあって1ヶ月もたってないよ?いいの?」
「何か俺の部屋から盗みたいものある?」
「盗まないってばっ」
「欲しいものあったら、あげられるものならあげるよ」
俺は飯を食べ終わると、棚に置いていた箱を開けて、合鍵を取り出して。
静華の手の中に転がした。
「…これが一番、うれしいかも」
静華は鍵をぎゅっと握って。
そう言ってもらえるのが、一番、うれしいかも…と、ラブラブな心境になる俺がいる。
静華と出会うきっかけをくれた篠原に感謝。
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