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ナンパから始まって、1週間で実った俺の恋愛はなかなか順調である。
学校へいくと、千明ちゃんが膨れっ面で俺に声をかけてきた。
メールはきていたけど、返事をしていないのが原因かと思われる。
「そんな顔をしていたら、かわいい顔が台無しよ?」
俺は千明ちゃんの頬をうにうに摘まんで、昼休み、外へ飯を食べにいく。
千明ちゃんは俺についてきた。
「だって一也も翼もなんにも教えてくれないんだもん。クリスマスに翼はどうして一也の元カノといたの?翼、前に一緒に尾行したから、元カノって知ってたよね?」
問い詰められている。
千明ちゃんに対しても微妙に複雑な心境だ。
俺が悪いんだけど。
「…彼女はアタシの彼女になりました」
「ゲイなのに?」
そこを千明ちゃんに否定してしまうと、演じているだけなのが学校の中でバレそうで。
俺は千明ちゃんにはひたすらゲイということにしている。
「彼女は別なのよ」
「あたしのこともそう言って口説いたくせに」
「去年の話でしょ?しかもアタシを即振ってくれたくせに」
俺はなぜか千明ちゃんと並んで歩いて、学校のそばの丼屋に入る。
昼飯時の店内は盛況だ。
学生やサラリーマン、OLがたくさんいる。
千明ちゃんも店の中についてきて、俺の座るカウンター席の隣に座る。
「振ったのはアタシだけど…。フラれた気分になる。翼の気持ち、これでも受け止めてはいたつもりだから」
「中途半端に受け止められてもうれしくはないわよ?」
「…一也いなかったら翼とつきあってたと思う」
「それもうれしくないわね。アタシにもプライドがあるの。横恋慕だとしても、篠原よりいいって言われて、選ばれたいプライドがね。選ばれなかったけど」
「……それは無理だよ。一也にフラれない限りは離れられない。でもなんで一也の元カノとつきあうことになったの?元カノ、なんだかずるいよー。あたしも翼とつきあってみたかった」
どこまでが本心なのか。
凹むようなことを言ってくれたかと思えば、持ち上げてくれる。
嫌われてるからフラれたわけじゃないのはよくわかる。
それも悔しいけど。
静華とつきあえたからよしとする。
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