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「ねぇ、いつもいるけど何やってんの?」
遠くから見ていたからわからなかったけれど、細いと思っていた目は、大きくてまあるかった。
訊かれて当然の質問だったけど、私は何も言えなかった。
「サッカーしたいの?」
サッカーは嫌だったけれど、きみを見てるだけなんてそんなこと言えないし、
ここは「うん」と言っておくしかないと思った。
「えっ、でも女の子は危ないと思うし…多分ボールについていけないよ」
彼は真面目な顔で言った。
「うん」
すると彼はポリポリと頭をかき、
「ん~じゃぁさ、後で俺とどっかでやろ?」
「えっ」
「な?じゃぁ!」
手のひらを向けて、彼はグラウンドに戻って行った。
真っ黒なサッカーボールを抱えて走る彼の後ろ姿を、私は呆然となって見つめていた。
しばらく、全く動けなかった。
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