サッカー少年

3/6
前へ
/11ページ
次へ
「ねぇ、いつもいるけど何やってんの?」 遠くから見ていたからわからなかったけれど、細いと思っていた目は、大きくてまあるかった。 訊かれて当然の質問だったけど、私は何も言えなかった。 「サッカーしたいの?」 サッカーは嫌だったけれど、きみを見てるだけなんてそんなこと言えないし、 ここは「うん」と言っておくしかないと思った。 「えっ、でも女の子は危ないと思うし…多分ボールについていけないよ」 彼は真面目な顔で言った。 「うん」 すると彼はポリポリと頭をかき、 「ん~じゃぁさ、後で俺とどっかでやろ?」 「えっ」 「な?じゃぁ!」 手のひらを向けて、彼はグラウンドに戻って行った。 真っ黒なサッカーボールを抱えて走る彼の後ろ姿を、私は呆然となって見つめていた。 しばらく、全く動けなかった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加