【15年前の冬~The first move】

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. 「なにか?」  男は遠慮なく隊員に顔を近づける。  まるで、人をあざ笑うかのように、ニヤニヤしていた。 「兄ちゃん!ほっときいや」  渡部が二人の間に割って入った。  隊員は何も言わずに、その場を離れて炊き出しの準備を手伝った。 「そんなもん手伝う暇あるんやったら、早ように仮設でも建ててほしいわなぁ、あはは」  男は隊員に嫌みを言いながら、その場を立ち去って行った。 「ありがとな、気い悪うせんといてや」  渡部が隊員に気を使う。 「いぇ、大丈夫です。あんな常識のない人が居るんですね、纏めるの大変では?」 「まぁな、せやけどアイツは相手にしてませんから、あはは。気にしたもんが馬鹿見ますさかいに」  渡部の顔は笑っていなかった。  渡部が一番歯痒い気持ちでいっぱいだったからだ。  事ある毎に、嫌みな台詞を吐いては、人を不愉快にして、口を開けばボランティアにやらせろと言う。  配給される弁当に毎回いちゃもんつけては、避難所の空気を掻き乱す。  厄介者とは、正しくその男の事だと、誰しもが敬遠していた。 .
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