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避難所生活に於ける様々な問題点の一番厄介者は人間関係だった。
窮屈で不便な生活がストレスになり、そこへ人間関係に気を使いストレスに拍車をかける。
皆が被災者意識が高い中、ストレスの矛先は人を攻める言葉や態度に変わる。
自ら考え、工夫し、乗り切ろうとする思考を奪っていく。
天災なのだ。
誰が悪い訳ではない。
避難所があり衣食住は確保できる。
それだけで生きては行ける。
それを、有り難いと言う意識がいつしか失われ、人は我が儘を口にする。
誰彼に依存するのではなく、自ら切り開く考えや、行動が必要だから、元井や渡部は率先して避難所でみんなを元気づけ、嫌われ役をかってでていた。
「しかし、あのオッサンは腹が立つ」
渡部が炊き出し用の鍋を掻き回しながら独り言のように言った。
「あの人はいつもあの調子で?」
自衛隊員の一人が渡部に聞き返す。
「せやな、どうしようもないオッサンやで、星やんが居らんかったらイテまうんやけどな、アハハ」
「ホシやんって?」
「あぁ、ここの避難所を影で支えてくれてる人や、星野言うまだ若い青年で、まぁ頭がキレるキレる、喧嘩も強いしな」
渡部は得意気に説明した。
「なんちゅうても、人情味があるわな、自分の事はそっちのけで、ワシ等の被災者の事ばかり考えてくれる人や、自分も被災者やのにな、大したもんやで」
元井も渡部と同じように、得意気に話した。
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