【15年前の冬~The first move】

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.  妻、亜希子の実家に着いた剛士は美希の祭壇に手を合わせた。  ゆっくり目を開けて、遺影を見上げる剛士。  美希の屈託のない笑顔が涙を誘う。  溢れ出す涙と同時に、肩が小刻みに振るえると、呼吸がバランスを崩し始める。  美希との思い出が走馬灯のように駆け抜けて行く。  そして剛士はしゃくり上げた。 「……あなた」  亜希子が白いタオルを剛士に差し出した。  剛士の背中にそっと手を預けると、ゆっくりとさすり始める。 「……もう、避難所へは戻らないの?」  剛士の背中に問い掛ける亜希子。 「明日戻る」  鼻を啜りながら、タオルで拭う剛士。  時折、咳き込んでは呼吸のバランスを戻す。 「……あたしの事は」 「明後日から、仕事が海外で……、だから顔だけ出して来る」  沈黙が静寂を運ぶ。 「……いつ戻るの?」 「恐らく、2ヶ月はかかる」 「……、仕事変えて欲しい、独りぼっちは耐えられないから」 「……」  剛士は亜希子の寂しさを理解していた。  一年の大半を北朝鮮で過ごしていた剛士。  今までは亜希子の寂しさを美希が誤魔化してくれていた。  その美希が側に居ない今、亜希子は寂しさに潰されそうになっていた。 「考えてみるから、少し時間をくれないか?」  剛士の言葉にそっと頷く亜希子。  剛士は亜希子の肩を抱き寄せた。 .
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