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ノートパソコンを閉じた剛士は再び神戸へと車を走らせた。
外は生憎の雨だった。
車のワイパーが規則正しくキュッ、キュッっと、鳴っている。
この雨の中炊き出しはやってるのだろうかと、渡部や元井の顔を剛士は思い出していた。
渡部や元井、そして元刑事の安斎智美は避難所を上手く纏めていた。
時にはお節介者だと罵られる時もあったが、剛士が頑なに纏め役が必要だと三人を説得したのがきっかけで、三人共に現実を見て理解し、嫌われ役を買って出ていた。
特に目立ちにくい性犯罪に虐待を皆が纏まり、規則の中で生活する事によって未然に防いでいる事は間違いなかった。
この手の犯罪は被害者の人権問題が優先的に考慮される為に、見て見ぬ振りも否めなかった。
剛士は車の中でそんな事を考えながら、神戸へと向かっていた。
助手席に置いてある携帯電話が震えた。
ーー 着信 佐野賢也 ーー
「悪い、連絡遅くなった」
剛士の同僚の佐野賢也からだった。
「で、どうだった? 聞くまでもないけど」
「あぁ、回収したよ。あの盗聴器じゃ役目は果たさんよ」
賢也は部屋のテレビのボリュームを絞りながら、ソファーに背中を預けた。
「だろうな」
剛士は車をコンビニの駐車場へ滑り込ませた。
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