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名古屋空港に到着した剛士はロビーへと急いだ。
搭乗者の宿泊先の手続きをする必要があったが、剛士はお構いなしだった。
ロビーには人集りができている。
その人集りの先には壁に固定されてある、大型のモニターが備え付けてあった。
そして、そのモニターを見た剛士は、愕然とした。
言葉が出てこない。
空から映し出されている映像は、変わり果てた神戸だった。
ありとあらゆる建物と家屋は原型を留めていない。
高速道路が倒壊している。
日本の安全神話が崩れ落ちていく。
モニターの先にある公衆電話には長蛇の列ができていた。
〔恐らく全世帯停電してる、通信は無理だ。亜希子と美希は……〕
剛士は人気のない所へ移動して携帯電話を取り出した。
まだ、携帯電話がさほど復旧していない時代だった。
人前での通話は敢えて避けた。
祈る思いと、繋がらないで有ろうの諦めの気持ちで、自宅に電話を掛けた。
案の定全く繋がらない。
〔そりゃそうだ、繋がる方がおかしい〕
ロビーに戻り、またモニターを見る。
壊滅状態の神戸が目に飛び込んでくる。
高速道路は渋滞、西行きは滋賀県まで延びていた。
その高速の渋滞を見て、剛士は政府に怒りを覚えていた。
また人気のない所に移動して機密機関の長谷川に電話を掛けた。
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