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「星野です」
「着いたのか!」
長谷川の声は焦っていた。
「いえ、名古屋空港で降ろされました」
「そうか、神戸がえらい事になってる」
「えぇ、ロビーのモニターで確認しました」
「終わったな、神戸」
「はぁ? 終わった?」
諦めにも取れる長谷川の言葉に剛士は呆れた声を出した。
「……、見ての通りだ」
「何で高速に一般車両を入れる!」
「俺の管轄じゃない」
「まぁな、消防車に救急車、自衛隊の車両が留まってる!」
「あぁ分かってる」
長谷川は、尚も他人事のような返事をした。
「人命救助が優先や!」
「心配すんな、生死のリミットは72時間、後60時間ある」
剛士は長谷川の言葉に天を仰いだ。
「長谷川さん大概やな、この寒さ、おまけに神戸は雪、夕方までに自衛隊とレスキューを神戸へ入れんとあかんやろ! 60時間保たん! 30時間が関の山や!」
「……だから、俺の管轄やない!俺に言われても困る!」
長谷川は一方的に電話を切った。
「クソっ!」
剛士はロビーの長椅子に腰を下ろして、最善策を考え始めた。
〔総理よ今何考えてる? おどおどしてる場合やないで、あの状況じゃ殆どの人が、建物の下敷きや、兎に角、自衛隊をさっさと入れろ!〕
剛士はまた携帯をスーツのポケットから取り出して、人気のない場所まで走った。
「星野です」
電話の相手は国土交通省の大臣、菅野だった。
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