【夏~未来へ】

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「伝えるって……?」 勇輝が剛士を振り向いた。 「将来、君達にも家族ができるだろう。その家族に、命の尊さと、こうやって尊い命が奪われたことを……」 「……」 「……、勇輝君がお母さんに教えて貰ったこと、恭平君が立ち上がり未来ある行動に出たこと……。愚かな大人たちの私利私欲だけしか見えない無意味な欲」 「……」 「……、そして、あの夏を消さないこと」 「あの夏ってなんですか?」 恭平が剛士を振り返った。 「……、学校で教わっただろ?太平洋戦争……、広島、長崎に落とされた核爆弾……。それが原因で戦争に終止符を打ったあの夏だ」 「……、はい、確かに習いました」 恭平はそう言いながら、勇輝を見た。 勇輝は頷いた。 「……、東北原発事故はあの夏を忘れた愚かな大人たちによる人災事故だ。いつしか伝える事を忘れ、放置し、百パーセント安全だと洗脳され、自己暗示に掛かり迫り来る危機に気付かなかった。一歩間違えばあの夏の数十倍、数百倍の大惨事を招きかねなかった事を伝え、忘れないで欲しい」 「はい」 勇輝と恭平は同時に返事をした。 「……、せやな、星野さんの言う通りや、忘れたらあかん、あの夏もこの事故も、犠牲になった人のことも忘れたらあかんわな」 渡部が勇輝と恭平の肩を叩いた。 「まっ、この二人は大丈夫や、ちゃんとしてるさかいに」 渡部の言葉に二人は照れ笑いを浮かべていた。 「で、星野さんはいつ大阪行くんや」 しんみりとした様子に渡部は話題を変えた。
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