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「いやまあ普通の声を出せと言われれば出せるけどね」
学ランの上からパーカーを着込んだ奴がこの言葉を口に出した時
私はコイツの事が嫌いになった
「酷く体力を使うからそう使えないだけで」
沢田は掴まれた手とは逆の方でまた書きだした
器用な人だ
これから器用な人と呼ぼう
【自己紹介がまだだ】
【僕の名前は沢田武典】
【建設科の二年】
【君の先輩だ】
「?」
あれ
私はいつ自分の学年についてしゃべったのだろう?
有賀先輩が私について話しのだろうか
しかし
可笑しい
有賀先輩は私の歳と学年と名字すら知らない
私がこの学校に通っていることを存じているのかも疑わしい
毎週度々マックで一緒に飯を食うのも
家が近いからと、顔馴染み(両親が離婚する前に兄貴が有賀さんと付き合っていた。)というだけでしかない
他人と余り関わらない事を信条とするお方だ
最も、唯一の例外は兄貴だったようだが
マックに入って
第一声目が
「お前の兄貴はどうしてる?」
だもんなあ
私が疑問に思っている内に
ボブカットの先輩が割り込んできた
「僕の名前は大友。有賀さんと同じ二年で沢田君と同じクラスだよ」
「でも君は凄いね、吉川さんと円通寺と沢田君なんて教室に入った途端気絶しちゃったよ」
八の字を解除した大友が
強引に話を逸らそうとしている
成る程考えちゃいけない感じか
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