泰山か或は鴻毛か

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4月といえばエイプリルフールが有名だろうなのだろうが 私がこの日から体験した事は嘘には出来ないだろうか 入学式が終わり新たな日常が始まりだして14日たったその日 私はその日の放課後、廊下に立っていた 暖房が効く教室とは打って変わって、廊下は冷えていた 私が吐く息で少しでも廊下が温まれればいいかなと 私の思考はハア、とさして意味もなく吐息を吐き出すように体に命じる 肺から吐き出された二酸化炭素とその他諸々は、口から離れた瞬間、白い炎のように見えた かじかんできた手を、グーにして握り学ランの上着のポケットに入れる際 この廊下には、新春の香りがまだ辺りを包み込むように残っているのかもしれなと、本気でそう思った。 それぐらい 4時過ぎの学校の廊下は冷えていたのだ 「『…かい?』」 正直な話 私こと仔細愛蔵は漢字が余り得意ではないことを告白しよう 先輩方から教えられるまで魁という字をずっと(かい)と読んでいたのだ 「これはさきがけって読むんだよ」 部室の前で右往左往していた私に先輩は声をかけてきた なる程 それだけで この部室の扉に窓に貼られている紙の印象は私の中で大分味のある物になった 「でもちょーダサくないっすか?」 本音をぶつけて見た 「否定はしないよ」先輩はそう言って私にくっきりした二重の黒の瞳を緩やかに曲げるように微笑みかけ、肩を傾げる にしゅっと引き締まった顎に柔和な微笑み 中々漫画にでも出て来そうな顔だが、いかせん不釣り合いな赤茶のボブカットが全てを破壊している スネエモンとどっこいどっこいくらいだといえば分かりやすいかもしれない 「昔から続く部だからねぇ名前を変えようとしても申請が降りないんだ」 「僕は怪奇都市伝説部にしようとしたんだけど」 「あーそれは終わってますね」 どちらが終了しているのかは言わないでおこう
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