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サクリファイスを受け取り神霊三体を従えて駆けていく光を見送った。校庭を歩きながら起こすべき行動を考える。流石に直接的な気配こそ消えたが薄い霧のような死の気配を感じる。まるで死が世界そのものを覆っているようで非常に気持ち悪い。
校門に差し掛かったところでアガトとセイムンが合流した。近隣を走り回って息も絶え絶えな彼らにもう大丈夫だと伝える役割を与えてやった。泣いて喜んでいた。
僕は国王の執務室へやってきた。事の顛末を報告し対応策を話し合う必要がある。大げさでも何でもなく、この世界が滅びかけたのだから僕一人では手に負えない。
面倒な入室確認も一切行わず扉を開け放ち書類整理中だった国王の髪を“鋏”のイメージを体現した彼女で剃り上げた。
「こんにちはハゲ国王、色々と言いたいことはあるがまだ頭で止めておいてやる」
一瞬の内に毛根を死滅させられた国王は、絨毯に舞い落ちた髪を呆然と見つめるとゆったりとした動作で僕を睨みつけた。睨み返すとすぐに目を逸らしたが。
「学園が騒がしかったそうだが、その報告かい?」
「ああ、世界が一瞬滅びかけたよ。あんたが異世界から呼んだ野郎のおかげでな」
「……! 何故それを」
「細かいことは気にするな。僕が聞きたいのはあいつが此処に居る理由だ。それが分かればある程度繋がりが見える」
僕の十八歳の誕生日。あの日前国王(豚)に呼び出されて以来僕の身に余る出来事が立て続けに起きている。前世でもこれと似た経験をしたことがある。その中心は光だったが。
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