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常温の金属は、冷たく感じる。火で炙るか天日干しにでもしない限り、そう熱くなることもない。
そのどちらでもないのに激しい熱さを感じるのは何故だろうか。
ただ、脇腹に突き刺さっているだけだというのに。
「……痛い」
……冗談じゃない。不良風情のナイフに貫かれて死ぬなんてのは絶対に嫌だ。
そもそもどうしてこうなった。いつも通りに過ごしていた筈が、どうして瀕死の状況にあるのか。
そうか、“いつも”が少し行き過ぎた結果なのか、これは。そう結論付けるしかない。
僕は我が弟分にして親友である主人公の為に犠牲となったのだ。
すべては物語の為に。
僕を僕達をこの世界を、読んで楽しむ者達の為に。
「うおぉぉぉぉぉおッ!」
至近距離で叫ぶな喧しい。
高速で繰り出された拳が不良を射抜く、同時に激痛。不良の手にナイフが握られたまま……ぶっこ抜けたのか。
「痛い痛い痛い痛い痛てぇ!」
何か体から出てる、抜け出していくのが分かる。血だ、傷の周り真っ赤っかじゃねぇか。
自分の血。血だよな。……。
「む、無理」
即座に目を逸らし、傷を両手で覆った。出血を止めないと死ぬ。既に貧血気味なんだから。
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