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「彩人!」
「金城光」と書いて「かねしろひかる」と読む。それがこいつの名前だ。
まあ、どうでもいいか。
光は不良を行動不能にした後で僕に駆け寄ってきた。
お前の所為で悪化したよ、とは言わないでおこう。そんなことで思い詰められても困る。
「いつもいつも、隙だらけだって言ってきたよな?」
「……うん」
「屑野郎相手に油断してんなよ」
息も絶え絶え、とはならない。なまじ怪我に慣れているだけに、損な人生送ってる。
他人を庇うなんて柄じゃない。背後からの不意討ちを見過ごせなかっただけだ。
「いいか、正義を押し付けるのはお前の勝手だがな、押し出された悪の犠牲を出さねぇようにしろ」
……言葉が次々に出てくるな。説教は好きじゃないのに。くそ、これから死ぬみたいな台詞だ。
嫌だ、死にたくない。
「彩人、ごめん。俺、俺が……」
泣きそうな光。そんなに暇なら止血手伝え。口が動かない。
「世界はお前が思う程甘くない。よく考えて行動しろよ、光」
本当に、これが僕自身の台詞であればどんなによかったろうか。こいつにはいくら言い聞かせても足りない。
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