出血多量

3/6
前へ
/150ページ
次へ
「彩人!」  「金城光」と書いて「かねしろひかる」と読む。それがこいつの名前だ。  まあ、どうでもいいか。  光は不良を行動不能にした後で僕に駆け寄ってきた。  お前の所為で悪化したよ、とは言わないでおこう。そんなことで思い詰められても困る。 「いつもいつも、隙だらけだって言ってきたよな?」 「……うん」 「屑野郎相手に油断してんなよ」  息も絶え絶え、とはならない。なまじ怪我に慣れているだけに、損な人生送ってる。  他人を庇うなんて柄じゃない。背後からの不意討ちを見過ごせなかっただけだ。 「いいか、正義を押し付けるのはお前の勝手だがな、押し出された悪の犠牲を出さねぇようにしろ」  ……言葉が次々に出てくるな。説教は好きじゃないのに。くそ、これから死ぬみたいな台詞だ。  嫌だ、死にたくない。 「彩人、ごめん。俺、俺が……」  泣きそうな光。そんなに暇なら止血手伝え。口が動かない。 「世界はお前が思う程甘くない。よく考えて行動しろよ、光」  本当に、これが僕自身の台詞であればどんなによかったろうか。こいつにはいくら言い聞かせても足りない。 .
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

678人が本棚に入れています
本棚に追加