はじめに

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岩崎の机の上のパソコンは通常のものとは少し変わっていた。 ディスクを入れる挿入口が2つ並んでおり、画面の前にマイクが備えつけてある。 「ガンさん?お願いがあるの。ちょっと起きて」 ガンとは机に寝ているこの岩崎のことのようだ。岩崎の体は大きく、ベタついた髪に顔を覆う髭。まさに岩のようだった。 ガンと呼ばれた男が薄く目を開けた。 「栞、ぼくのことはロックと呼ぶように言っただろ?岩崎だからロック。カッコいいじゃんか」 岩崎はあるソフトを開発していた。人と同じように自分の意思を持ち、自分で思考し動く。コンピュータ内に生きる人間と呼べるものだった。 このソフトを作るのにはかなり苦労した。人の脳を電気信号でコピーし、人の「知りたい、わかりたい」という欲求を埋め込んだ。しかしその情報が莫大すぎてメモリー内に収まりきれるものではなかったのだ。 岩崎は無限メモリー なるものを作るために、無限の箱のようなものを探したが物質世界にそんなものは存在せず悩んだ。 そして岩崎は光の存在に注目した。二枚の鏡を合わせ鏡にすると光が反射し、無限の世界が現れる。その世界を一つの箱のように情報を置いていく、一番手前を1とすれば2番目は2と番地のようにし、必要な時に情報を取り出せるようにしたのだ。 そのため高度な鏡面加工されたディスクが二枚必要になるため、挿入口が2つ必要だったのだろう。 岩崎はパソコンから繋がった七色のレンズの不思議なメガネを掛けた。 すると岩崎の目の前の風景が変わり、ディスプレイの中とまったく同じ世界にいた。
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