「めんどくさいですね」

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転ばせた後、カゴがあると戦いにくいと思った朱鳥はたまたま近くにいた黒い着物を着て腰に刀をさしている男にカゴを渡し 「少し預かってて下さい。」 と頼み立ち上がろうとしていた浪士に踵落としをして気絶させると標的を変えた。 関係ない人を巻き込むのは気が引けたが回りにいた中で一番強そうな人に渡したし、その人に怪我をさせない自信もあった 。 二人目の浪士の刀をかわし顎にアッパーをいれ気絶させた朱鳥は刀と刀がぶつかりあう音を聞き慌ててその方向をむいた。 案の定カゴを預けた男と浪士が対峙していてた。カゴを持っているため片手で刀を受け止めている。どうやら仲間だと勘違いされてしまったらしい。 申し訳なくてたまらなくなった朱鳥はその男と対峙していた浪士を後ろから首に手刀を落とし気絶させた。 その時朱鳥は黒い着物の男が無表情だったので(彼も表情が表に出にくい性格のかな)と思いながらも最後の一人を見た。 朱鳥は気絶させようと立ち向かって行ったのだが邪魔にならないようにと背中にさしてあった釣竿が民家の壁に引っ掛かり一瞬動けなくなってしまった。 目の前まで迫って来ていた浪士が朱鳥に刀を振り降ろしたが朱鳥はすれすれで避け、そのまま横なぎに刀を振られたら斬られてしまうためすぐに浪士の手首を掴み締め上げようとしたのだが… その必要はなかった。 黒い着物の男が浪士の首に刀の柄で叩き気絶させてくれたらしい。 朱鳥はすぐにお礼を言った。 「礼などいらない…それに最後のも助けはいらなかったようだ…。」 自分が浪士を締め上げようとしていたことに気付いていたのかと感心して男の顔を見るとまだ自分と同じくらいの青年だった。 「でも助かったのは事実です。是非ともお礼を…。」 と言うと 「本当に礼などいらないのだが…それより急いでいるんじゃなかったのか?」 朱鳥は朝御飯の準備のことをすっかり忘れていたため(まずい!)と思い青年からカゴを返してもらうと一礼してから走りだし 「今度会ったときは必ずお礼しますんで~。」 と言い残し見えなくなってしまった。 朱鳥も青年も何故かまた会えるような予感がしていた。
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