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あたしの肩に頭を預けたまま晴輝は語りだした。
「百合さんさぁ、結婚するらしくてさぁ…この間ゼミの卒業コンパで、みんなで百合さんのこと祝ったんだ…
俺、告白する前に玉砕だぜ?ハハッ」
乾いた笑いで自分を嘲笑う。
あたしはまだ告白できただけよかったのかもな…
晴輝は、百合さんと同じゼミに入ってから二年間ずっと片思いをしていた。
片思いは切ないけれど、案外楽しくて、あたしと晴輝はよくお互いの恋バナをしたものだ。
「百合さんさ~俺に出し物してほしいっつーの。思いっきり『はい!』って元気に答えちまったよ」
明るいムードメーカーである晴輝はエンターテイナーでもあって、歓迎会、合宿、結婚式、誕生日会…いろんな場面でみんなを笑いに巻き込んでいた。
百合さんが晴輝に頼むのはその腕を信用してのことだろう。
「悔しいけどさ…これが俺が最後にできることだと思うし…。それに、引き受けたら、百合さん、俺のこと覚えててくれる気がするんだ…」
晴輝の優しさと切ない気持ちが痛い。
「美雨には本当悪いんだけどさ…俺と一緒に百合さんの結婚式参加してほしいんだ。美雨がいると…心強いから。」
いつもは強い晴輝が弱くて、可愛く見えた。あたしは彼の背中をぎゅっと抱いた。
「いいよ、いっても。」
晴輝を応援したい。
…すごく。
「ありがとう」
晴輝のほっとした顔を見てあたしはようやく彼から離れた。
「式は6月26日の日曜日らしい。美雨の誕生日近いな。」
「3ヶ月くらい後かぁ~ジューンブライドじゃん、いいなぁ。」
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