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ジューンブライド。
それはローマ神話では女性と結婚の女神であるユーノー(ジュノー)の司る6月に結婚すると幸せになれるという言い伝え。
「ロマンチックな百合さんらしいよな、6月なんて雨降るし、じめじめするしでいいことないのになぁ~」
現実的な人から見ると、確かに6月は結婚式にぴったりの時期とは言えないかもしれない。
でも、あたしは百合さんの気持ちがわかる。
女神に祝福された結婚式。幸せになれそうだし、憧れる。
「女の子ってそんなもんよ」
「まさか…美雨もそんなこと考えてるのか?」
晴輝は呆れた顔をしてあたしを見た。
「そうだけど…悪い?」
百合さんは納得できるけど、美雨は納得できないなんて失礼なやつ!
あたしは少しツンツンしながら答えた。
「いや、悪かないよ、ごめんごめん!」
…まぁよしとするか。
「それにしても百合さんの彼、優しいよねぇ~たぶん、晴輝と同じこと思ったはずなのに、ジューンブライドさせてくれるなんて」
きっと百合さんの結婚相手はとても優しくて、素敵な人にちがいない。
「俺だって、自分の結婚相手がジューンブライドしたいっていったら合わせてやるし」
晴輝は少しすねたように言った。
全くバカなんだから。
「ハイハイ…」
「なんだよ、その可哀想なモノを見るまなざしは!!」
「さぁねぇ…教えてあげないんだからねっ」
もったいをつけて返してやった。
「…ぷっ…あはははは」
だめだ、なんか笑っちゃう。
「あははははは、なんだよそのビミョーなツンデレは!!てか俺、美雨とのバカみたいなやりとり大好き!」
晴輝も腹をかかえて笑っている。
「あたしも!てかあたしそろそろ帰らないと、明日早いからっ」
時刻は真夜中、1時を過ぎていた。早く帰らないと。でも笑いが止まらない。
「おおそうか!あ、じゃあ俺送るよ!」
「いいよ!隣のマンションだからっ」
徒歩1分で着くし。
晴輝はそれを知っているくせに、いつも送るよーという。
「夜だし、危ないから…ね?」
「わかった」
こうしてあたしは、いつも送ってもらうことになる。
ガチャ
テクテク
…ほら、もう着いた。
「じゃあな、美雨、今日はありがとな。慰めようと思ってたのに、逆に慰められちゃって…」
「ううん、あたしもなんかちょっとスッキリしたし。またお互い頑張ろ!」
「おやすみ」
「うん、おやすみ。」
パタン。
ドアがしまった。
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