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高校時代アルバイトなんかできなかった。
田舎にはなにもなかったし、第一に父親に許しをもらうことなんてできない。
それでもお金は必要。
家出するための片道のお金だけでもいい。
お小遣やお年玉もそんなにもらえなかった我が家では、小銭を貯めるのも大変だった。
本当は高校にいかず働くように言われていたが、高校だけはと頼んでいたからお小遣をもらうことなんてもってのほかだった。
将来の仕事を決められた私と違って、純は自由に育てられた。
純に言わせれば、自由ってのは自分はいらない存在なんだと思わされるもんだよと言っていたが、いい高校に進めていい大学に進められるようにと、父は純への進学へ熱心だった。
『期待してるわけじゃない。涼がいて俺を必要としてないから遠ざけたいだけだよ。』と純は言った。
そんな純への特権の一つが参考書代ならいくらでももらえると言うこと。
私たちは結託した。
純は進学し、父の望む息子になって、いつか自分も見てもらえる為に努力し、私は父から逃れる為に、純が残してくれる小銭を貯めて家を出る。
もしかしたら、純は私が邪魔だったから協力してくれただけかもしれなかったが、私は私がいなくなって純が愛してもらえるなら早くそうしてあげたいと思った。
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